04 紅藍の閃光


 ふと、意識が浮上してくる感覚がする。そのまま眼を開けると、飛び込んできたのは真っ白な天井だった。辺りに目を向けると、どうやら保健室のベッドに寝かされているらしく、消毒液のかおりが鼻を掠る。
 すると、眼の端に黒い物体を見つけた。それは宇髄で、今日は黒いパーカーを被っているので白い保健室の中、妙に浮いて見える。宇髄は丸椅子に座っているらしく、上半身をベッドに預け、そこで腕を組み、その上にあごを置いて目を瞑っていた。寝ているのだろうか。
 思わず手を伸ばしてしまい、流れる白髪を撫でてしまう。長い睫毛が頬に影を落としていて、その瞼が徐々に持ち上がり紅色が顔を出す。
「ん……ああ、寝ちまった。起きたか、冨岡。心配したんだぜ。急に倒れるから」
 すると先ほど宇髄の口から発せられた言葉を思い出した義勇は、顔を赤らめながらベッドに深く潜った。どんな顔をして宇髄を見ればいいのだろう。
 宇髄は、義勇を性的対象として見ているのだから。
「とーみーおーか。顔を出せ。ほら、寝るとのどが渇くからと思って、さっき買っといた。飲みたいって言ってたろ。アサイージュース。ちと温くなってるかも」
「あ、ありがとう……」
 ごそごそとベッドから抜け出て、上半身を起こして座ると同時にストローの刺さった紙パックが手渡される。確かに冷たさは感じなかったが、その心遣いが嬉しいと思う義勇だ。優しい人間は好きだ。
 そのまま受け取り、吸い口を咥えてジュースを飲み始めると、宇髄は先ほどのだらしのない恰好へと戻り、じっと義勇を見つめてくる。義勇も見つめ返すと、徐に宇髄が動き緩慢な動作で身体を起こしたと思ったら、ぎしっとスプリングを軋ませ、ベッドに乗り上がってくる。そしてそのままなんでもない顔をして義勇の両手を捉えてしまう。
 近づく顔と顔。宇髄は目を開けていて、義勇も開けていた。整った顔がだんだんと近づいてくる。
「うず……い……ンッ!ん、うっ……!」
 距離がゼロになった途端、唇に柔らかな感触が拡がり、義勇は思わず目を閉じた。気持ちいいと思う。唇に宇髄の体温が移ったかのように熱くなり、その優しい触れ合いに涙が零れそうになる。
 すると、べろっと大きく唇を舐められる。その瞬間、ドキッと心臓が一つ大きくなったと思ったらドキドキと胸を突き破らんばかりの勢いで心臓が頭に血液を送り込んでくる。
 宇髄はそのまま唇を何度も舐め、舌先で閉じている口をこじ開けようとしてくる。だが、義勇は開けなかった。少しだけ唇が触れ合った状態で、真剣な表情の宇髄が吐息の当たる位置で催促してくる。
「口を開けろ。開けねえか、義勇」
「だ、って……」
「だってもヘチマもねえ。エロいキス、させろ」
 その言葉に驚いた義勇は思わず口を開けてしまい、その隙を狙って宇髄の舌がするっと咥内へ入り込んでくる。その舌は義勇の舌を絡め取り、くちゅりと音を立ててそのまま舌を舐められ唾液を啜られる。大きく動く、宇髄ののど。思わず義勇も宇髄の舌を舐めると、その意図が分かったのか急に宇髄の咥内に唾液が大量に溢れ、それを義勇に送りつけてくる。
 甘い体液だ。しかし、不思議な甘さだ。夢中になり、義勇は自分の舌の上に乗せて存分に味わい、のどへと通す。
「んっんっ、……んんっ、は、うんっ……んくっ!」
 飲み下し終わると、待っていたのは濃厚な口づけだった。
 歯列を舐められ、上顎は特に丁寧に。頬の裏側もくまなく舌が這い、最後に舌を痛くない程度に緩く噛み、そっと唇が離れてゆく。
「はっは……あ、んっく……ふ、ふ……うずい……」
 義勇の身体はすっかりと熱くなり、震える手で紙パックをキャビネットの上に置いた。
すると宇髄が動き、ぎゅうっと義勇の頭を抱え、熱の篭った声色で「義勇っ……」と呟き、着ていた下ろしたての真っ黒なスタンドカラーシャツのボタンを三つほど外し、首元を舐めてくる。
「んっ……あ、あっ……んう」
 何度も舐められ皮膚に吸いつかれ、思わず身体を震わせると宇髄が首筋に歯を当て、緩く噛んだ後、興奮を入り交ぜたような声色でこんなことを言った。
「逃げねえのかよ。今の俺はシラフだぜ。酔っ払ってもいねえ。振り払うなら今ってこと、分かってんのかよ」
 その言葉に、義勇は宇髄の肩を少しだけ、押したりして抵抗したが抵抗のうちにも入らないそれに、宇髄は義勇の手を取り股間へと導く。そこは確かに猛っていて、平常とは言い難い。
 あまりのそれに、義勇は自身の顔に熱が集まるのを感じる。
「オマエに触ると、これが勃つ。チンポが勃つ。においを嗅いでも、傍にいるだけで勃っちまうんだよな。オマエは?」
「っあ……!や、だめだ。触るな、だめだって、言って、言ってる!や、あ!」
 宇髄の手は強引に足を割る形で股間に手を当ててくる。そして、しっかりとそこに触れられた途端、義勇は顔を真っ赤にして宇髄のパーカーの袖を震える両手で握った。
「お、半勃ちじゃん。お前もそうか」
「違う!これは……その、だって……宇髄に触られると、身体が熱くなって胸がすごい、ドキドキいって頭の中がぐちゃぐちゃになる。変になる。……怖い」
「怖くはねえよ。これは普通のことなんだって」
「だって男同士だ!お前も俺も、男で……」
「それがなんだってんだ。俺は構わねえよ、お前が男でも」
「胸だってない。どころか、その……股間には、アレ……ついてて」
「べつに胸が無くたって乳首はあんだろ。不自由はねえし、お前のチンポもお前含め、愛撫してやりてえし」
「っ……!!……だっ、俺は何も知らない。分からない」
「俺が教えてやるよ。何が知りたい?セックスの方法か?男同士でヤる方法。男同士のセックス」
「せっ……!?な、なにを、なに言って……そんなの、できるわけ」
「いや?できるぜ。オマエが知らないだけで、俺は知ってる。問題あるか?」
 思わず義勇は逃げようとするが、そこで逃がすほど宇髄も宇髄ではなく、簡単にベッドに縫い付けられてしまう。
「美術準備室、行くぞ。そこで教えてやる。俺がお前をどう思ってるか。男同士で何ができるか。どう気持ちよくしてやれるかも、教えてやる」
「や、いやだ。行かない。俺はだめなんだ。お前が欲しがっていい人間じゃない。そんな人間じゃないんだ」
「んなこと俺には関係ないね。いいから来い。なんだったら力づくでここから連れ出すぜ。俺の本気、知ってるよな」
「本気……?宇髄、なにするつもりだ。俺に、なにを」
「つべこべ言うな。行ったら分かる。俺の本気をなめてんじゃねえぞ。それを、今から分からせる。オメーはどうやらかなり鈍感みてえだからな。だったら、実行するしかねえだろ」
「実行って……その、なんていうか、あの」
「立てるか。立てねえなら担いでいくぞ。担がれたくなかったら自分の足で歩きな」
 どうやらある意味、宇髄の自由人が発揮されているらしい。こういう時、誰が何を言っても無駄なのだ。それは義勇も知っている。
 なにをされるか分からないが、どうやら美術準備室へ行かないことには、宇髄は絶対に何事も譲らないだろう。
 義勇は震える足で立ち上がり、スリッパに足を通し宇髄の後ろをついていく形で最上階へと向かう。

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