それから晴れてわたしはカッツの恋人?彼女?になったらしいのだが、いかんせん問題がひとつ。いやひとつじゃねえわ山積みだよわたしのバカ野郎…。とにかく、よく考えたらアレはわたしの大事なファーストキッスだったわけだし、カッツはカッツでわたしのこと避けまくるし?なんかもう大変なことになってしまった。あの一件について謝ろうにも、カッツは華麗にわたしのことを避けやがるのだ。

「あ〜もうマジで最悪あんたのせいだからね慶次絶対許さない」
「いや問題があるのはほんとにキスしちゃうなまえちゃんっていうか」
「あーうるさい慶次うるさいうるさいこのクソニート」
「…とりあえずさ、メールくらいしてみたら」

メール?メール、メール、ねえ。ラインならなんかもっと気が楽なのに、カッツガラケーだからなあ。てか無理無理無理無理会わせる顔ないし。左近からお前勝家に何したの?!っていうラインが来てた。何ってナニだよクソ野郎、と思いっきりケータイをブン投げたくなった。そんなこと言えるはずもないし大体語弊がありまくるので、左近には絶望に震えるウサギのスタンプを送ってやった。

「はあ」

最近毎日こればっかりだ。まあ自分が悪いんだから仕方がない、とは思う。でもあんなに、水族館に一緒に行ったりケータイにオソロのマンボウさんをつけるくらい仲がよかったカッツに、こうも毎日毎日避けられるとつらい。カッツと普通に話したい。前はよく一緒に帰ってたのになあ。こうやって一人で帰っているといろいろ考え込んでしまう。思い返せばカッツと一緒だとすっごくすっごく楽しかった。これって好きだってことなんだろうか?よくよく考えたら、慶次とか左近とかとチューするなんてたぶん絶対無理。でもカッツならできたし、考えただけでドキドキする。あれからいろいろネットで調べたけど、はっきりとした答えは出なかった。ただ確かなことは、カッツと話せないのはすっごくつまんないことと、カッツと過ごすのは楽しくて落ち着くということだ。

「あっ」

狭い歩道をケータイを見ながら歩いていたせいで、誰かと肩がぶつかった。反射的にすみませんと言って顔を上げると、見慣れたオカッパ頭、カッツだった。一瞬で頭の中が泡立った。カッツもなにやら考え込みながら歩いていたらしい。どうしたらいいかわからない、といった表情のカッツと見つめあったわずかな時間が何百秒にも感じられた。カッツはすごくきれいな顔をしているんだと、どうでもいいことを考えた。

「カッツ、話が、あるんだけど」

けれどもわたしは的確な判断を下すことができた。カッツは小さくうなずいた。わたしはカッツを近くの公園に連れこんだ。ふたり並んでベンチに座る。あっ、すごく、心臓がうるさく鳴っている。