ワンピース姿の勝家くんを半ば無理矢理連れてきたのは、帰宅ラッシュの満員電車。目的地なんてない。行き先なんてどうでもいいのだ。

「なまえさん、いったいどこへ」
「いいからいいから」

慣れないヒールでたどたどしく歩く勝家くん、あーんかわいい。
電車に乗り込むとすぐに会社帰りのオジサンたちにぎゅうぎゅう押しつぶされそうになる。勝家くんが不安げな瞳でわたしを見て、きゅっと袖を掴んだけれど知らないふりをした。みるみるうちにオジサンに包囲される勝家くん。わたしとオジサン一人分隔てられた勝家くんのわたしを見る目がかわいすぎて今すぐ抱きしめたくなったけれどぐっと我慢。なんてったってお楽しみはこれからなのだ。

「あっ」

小さく勝家くんが声を漏らしたのをわたしは聞き逃さなかった。ばっと勝家くんの方を見ると恥ずかしそうに俯いて唇を噛みしめている。後ろにはゲスな顔した小太りのオジサン。

キ、キターーーーー!!

オジサンは勝家くんの小ぶりなお尻を男のものとも知らずにいやらしい顔で撫で回す。見るからにおどおどして大人しくて誰にも逆らえなさそうな勝家くんは痴漢の格好の的になるとわたしはもちろん知っていた。


ある大きな駅に着くと、わたしと勝家くんを取り囲んでいたオジサンたちは一斉に降りていった。わたしたちも電車を降りる。勝家くんの手を引いてホームの人気のないところまでくると、勝家くんが慌てたようにわたしの腕に飛びついてきた。小刻みにカタカタ震えて涙目の勝家くんがかわいすぎてお腹の奥がきゅんとした。

「どうしたの」
「知らない、人が」
「痴漢でもされた?」

勝家くんはこくんと頷いた。

「怖かった?」

わたしの服をぎゅうと掴む勝家くんの頭をポンポンなでる。ごめんね超楽しかった。

「でもさ勝家くん」

わたしはワンピースの上から勝家くんの股間をそっと撫でた。そこはほんのり熱くなって固さを増していた。勝家くんはぎくりとするよう体を跳ねさせる。ははあん。

「興奮したよね勝家くん?知らないオジサンにお尻触られて、興奮したよね?女の子の格好してこんなにチンコ勃たせてさあ、興奮したんだよね?変態」

どっちかというとわたしの方が変態じみてるのかもしれないけど、まあいい。わたしが言葉攻めしたせいで勝家くんはもう泣きそうだった。やだかわいすぎ。でも、と力なく言う勝家くんを冷たく見下ろした。

「何?」
「わ、私は…」
「ちゃんと言って」

いつまでも地面に目を泳がせる勝家くんを向き直らせようと、ぐしゃっと髪の毛を掴んだ。勝家くんは恥ずかしさやら興奮やらいろんなのがごっちゃごちゃになったとてもそそられる顔をしていた。

「ちゃんとわたしの方見て言わないとわかんないでしょ?」
「私は…」
「はっきり言って!」
「わっ、私は!なまえさんが、いいです…。なまえさんにされるのじゃ、ない、と…」
「……」

えっ、ちょっ、何この子。反則でしょ。かわいすぎるんだけど。超かわいいんだけど。なにこれ。たまんない。ぞくぞくする。かわいすぎ、何この子。

「す、すみません」
「…ホテル行こっか」
「えっ?」
「今日は挿れさせてあげるよ」
「この格好でですか…?」
「シたくないの?」
「し、したいです」