俺が初めて心から愛したのがなまえで、俺を初めて心から愛してくれたのがなまえだった。彼女さえいてくれれば俺は幸せだった。彼女はきっとこの先も変わらず俺の隣にいてくれるのだとそう思っていたが、春先彼女は病に倒れた。なまえは腕の立つ医療忍者だったが、曰く忍術ではどうにもならないらしい。効くのかも分からない薬を飲むしか術がなく、俺も日に日に弱っていく彼女を見守ることしか出来なかった。そんなとき俺は彼女のある言葉を思い出した。折り鶴を千羽折ればどんな病もたちどころに治るという。藁にも縋る思いで俺は仕事の合間を縫い鶴を折り始めた。部下たちも手伝ってくれた。それをなまえに持って行くと、彼女は大層喜び一つ一つ糸で繋げていった。でもね我愛羅様、私きっと我愛羅様が千羽折ってしまう前に元気になります。だが彼女の言葉通り事が上手く運ぶはずもない。回復の兆しの見えないまま、俺は木の葉にしばらく赴かねばならなかった。折り鶴は既にかなりの数になっていた。出来るだけ早く戻るから、と彼女に告げて俺は木の葉へ向かった。彼女の訃報を聞いたのはそれからまもなくのことだった。
無我夢中で里に帰ると、そこにはもう冷たくなったなまえがいた。柔らかな笑顔で語りかけてくれるなまえが、眠れぬ夜を共に過ごしてくれるなまえがもういないなど、とてもすぐには信じられなかった。言いようのない悲しみが襲った。どうして、お前が。ポケットに手を突っ込み、折れかけの鶴を取り出した。そうだ、なまえが死ぬはずはないのだ。だって、
「これで千羽目だったんだ」
なまえは何も、何も言わなかった。