みどくんの部活を待つといつもより遅くなって、そのあと話して帰るからさらに遅くなって。すっかり街も冬の装いである今日この頃、そんなこんなをしていると辺りはすぐに真っ暗になってしまう。そうなると、みどくんはいつも私を家の前まで送ってくれるのだった。かじかむ手を握りあい、小さな歩幅でゆっくりと歩く。ベンチに座って二人おしゃべりをする公園から私のマンションの前まで、いくらゆっくり歩いてもあっという間に感じてしまうから不思議だ。今日だって、マンションの前で未だみどくんの手を離せずにいた。どうせ明日会えるけれど、今離れてしまうことがどうしようもなく寂しい。
「帰りたく、ないなあ」
みどくんの手をきゅうと握った。みどくんは大きな瞳で私をじいと見つめてから、繋いでいない方の手で不器用に私の頭を撫でた。みどくんの触れたところからは、彼のあったかい気持ちが流れ込んでくるようでとても心地がいい。みどくんは冷たいように見えてとても優しいのだ。
「お母さん、心配するで」
「うん」
そう言うみどくんも私の手を握り締めたままで、やっぱり離れづらかった。そんなみどくんの手を引いて、私は思いっきり背伸びをしてそっとキスをした。寒いせいで彼の唇は少し乾燥している。私は気恥ずかしさを紛らわせるために笑ってみせた。
「今日四回もちゅうしたね」
みどくんはぷいっと顔を逸らした。その横顔は少し照れくさそうで、それを見てどうしようもなく好きだなあ、と思う。
「なまえちゃん」
「なあに?」
「五回の方がキリがええと、思わん」
みどくんは呟くようにそう言った。とってもとっても嬉しくなって、大きくうんと頷いた。にやにやするのを隠しきれない。本日五回目となったキスはとても暖かかった。