何故僕は、こんな女とラブホテルにいるんだろう。金はすべて女が出すというからついてきた、自分の貧乏魂が恨めしい。女の言い分はこうだ、あのおじさんはカイトくんに譲るからその代わりにあたしとセックスして。何故僕?僕としては報酬のないセックスなんて御免被りたい。しかしついてきてしまった。あまりにも女が耳障りな甘い声を出すから、

「カイトくん」

ぷちりぷちりと僕のシャツのボタンをはずす女。猫なで声。そういえば同年代の女とはセックスをしたことがなかった。金のない女になど興味はない。
ねちっこいキスを上半身にお見舞いされた。女の舌はどこか甘く、いつもと違ってヤニ臭くないそれに、僕は少し感動を覚える。

「舐めてあげる」

女はするりと僕のズボンを下ろした。悔しいかな僕の愚息は、芯に熱を持ち始めていた。一度はやめろと髪を掴んだが、抵抗はやめた。こんなことごまんとしたりされたりしてきたというのに、なぜだか女のフェラは新鮮味があったからだ。いつものそれでは感じ得ない征服感は、僕をその気にさせるのには十分だった。

「もういいよ」

そう言うと女は肉棒をくわえたまま僕を見上げた。ほんのり潤んだ瞳、紅潮した頬。ぞくりとした。
君のも舐めてあげるよ、と僕は言った。今まで自分からなにかそういうことを提案したことはなかった。言われたらする、そのスタンスを取り続けていた。何故だろうだが僕は、この女を鳴かせてみたいと確かにそう思っている。

「やん、あん」

客は男だけじゃない。未亡人だかなんだかしらないが、金と時間を持て余した女の相手だってする。一応心得はある。だがなんだ、この女の反応はいちいち僕を震わせた。女は舌を這わせる度大げさなくらいに高く鳴いた。僕はその度背筋がぞくりとするのを感じる。このような高揚を、僕はセックスで感じたことはなかった。

「あんっ、イく、だめぇっ」

甲高い。女がイくイくと鳴きだしたときには僕はもう既に我慢の限界だった。自然と息が荒くなる。女を早く手込めにしたかった。
女がいいと言うから僕はそれはもう本能のままめちゃくちゃに女を抱いた。女はそのあいだじゅうキャンキャン鳴いた。それはもういい気分だ。だがどっと疲労が押し寄せてきて、なにもしたくなくなった。自分の長い髪が汗で顔に貼り付く。ああセックスって、こんなに疲れるものなのか。僕はラブホテルの無駄に柔らかいベッド、ただし体液でぐちゃぐちゃになっている、に身を沈めた。シャワーを浴びるのすらひどく億劫だ。隣の女はうっとりと僕を終始眺めている。

「思ったより手荒なんだね。興奮しちゃった」
「うるさいな、」

女は横たわる僕に近寄ってきて、恋人みたいなキスを寄越した。ふわりとした唇の感触。性の匂いがする女。それだけで、僕の情欲はゆっくりと頭をもたげてくるのだった。ついさっきまで疲れて何をする気も起きなかったというのに、馬鹿馬鹿しい。僕は女の髪をひっつかんで、ベッドに組み敷いた。髪を引っ張って、女の顔を舐めるように見た。女の恍惚の瞳に僕はまたぞくりとする。

「君、悪くないよ」

じゃあまたあたしとセックスしてくれるのカイトくん、君の胸を揉みしだいているのにその答えは必要なんだろうか。