「ごめんね、我愛羅」
我愛羅はしくしくしくしく泣いていた。座り込んでまるで子どものようにべそをかく我愛羅に目線をあわせて、わたしはひたすら謝りつづけた。元はといえばわたしがわるいのだ。我愛羅との待ち合わせを明日だと思いこみ昼過ぎまで寝ていた上に、ケータイを学校に忘れていたために我愛羅からの着信にも気付けず、結局我愛羅と会う約束したのはほかでもないきょうであったことに気付いたのは夕方五時前だった。だめもとで待ち合わせ場所の公園に行くと、ベンチにひとりさみしく座る我愛羅がいた。てっきりもう帰ってしまったものと思っていたのでわたしがたいそう驚いたのは言うまでもない。我愛羅はわたしを見ると何を言うわけでもなく泣き出してしまい、今に至るというわけだ。
「ほんとごめん、わたしがわるかったから、もう泣かないで」
もうだいぶ経つけれど、我愛羅が泣きやむ気配はない。もうお手上げだ、と思った瞬間我愛羅が口を開いた。
「なにかあったのかと、おもった」
ごめんね
「嫌われたかと、おもった」
消え入りそうなほどちいさなちいさな声で我愛羅は言った。よく見るとちいさく震えている。わたしはハッとして我愛羅を抱きしめた。人一倍臆病な我愛羅は、わたしを待っているあいだじゅうそんな不安に苛まれていたのだと思うと申し訳なさといとおしさで胸がいっぱいになる。
「こわかったんだ」
ごめんね、ごめんねとわたしまで泣きそうになりながら我愛羅をぎゅうぎゅう抱きしめた。だいじょうぶだよ、わたし我愛羅のこときらいになんかならないよ。我愛羅がおそるおそる抱きしめ返してくれたのがかわいくていとおしくてまたぎゅっとしたら、我愛羅がいたいと言ったのでぱっと手を離した。そうしたら泣きはらした我愛羅がぷっと吹き出したのがおもしろくて、わたしも笑った。もう日も暮れるけど、これからどうする?ね、我愛羅。