カイトがおっさん相手に売春してる
高校生くらい









「ねえおじさん、僕じゃ不満なんですか?」

すん、と甘えるふりをしてオッサンにすり寄る。鼻腔をくすぐるのはお世辞にもいい匂いとは言えない加齢臭、顔が歪むのをぐっとこらえた。こいつは僕にさんざん言いよってエロいことをしたりするくせに、このあいだ女子高生と歩いていた。こいつのことは好きでもなんでもないが、こいつは僕の客の中でもいちばん気前のいい奴だから、他の輩に取られては困るのだ。エロいことをさせてやるのも金のため、機嫌をとるのも金のため。こんなことでもしないと僕は学校に通えないし、日々食べていくのもやっとなのだ。

「そんなことないよカイトくん」

汚い手が尻を撫でる。もはやなんとも思わないが、少しくすぐったそうに身をよじるのも金のためだ。

「じゃあなんで他のコと歩いていたんです?」
「カイトくん見てたの?」
「…妬けるなあ」

その女のせいで僕に入る金が減ると困るんだよ。そんな本音はぐっと飲み込んだ。

「僕よりカワイイコ?」
「カイトくんがいちばんカワイイよ」
「また。ね、おじさん、そのコ、どこの高校のコなんです?」
「ええっとねえ。あれはたしか…」
「ふうん…」

女子校だなんて、なんて援交しやすいんだか。


「あ、カイトくんだ」

街中で急に知らない女に声をかけられた。誰だと思って見てみれば、あのおっさんと歩いていた例の女ではないか。何故僕のことを知っているのか

「おじさんがいつもカイトくんの話するの。キレイでカワイくて、素直でいいコだって。私立に通ってて頭もよくて、お尻なでたときの反応がキュート!なんでしょ?」
「……」
「いきなり話しかけてゴメンネ?一回近くで見てみたくって。それじゃあね」
「ねえ、」

女は振り返った。ああなるほど、オジサマどもに好かれそうな、派手すぎない純朴な顔をしている。それに加えて最近の女にありがちな過剰な痩せ形ではなくいい具合に肉が乗っている、間抜けそうな雰囲気の女。しかしこの女、エロいことがしたいと言ったね?あんな汚い野郎と?腹立たしい、僕は好きでやってるわけじゃないのに。

「君、あいつに近づいてるのは金のため?」

女はきょとんとして首を傾げた。こういう仕草が、オジサマどもの性欲をくすぐるのだと一人納得した。

「ううん、ちがうよ。たまたま知り合ったの。あたしはえっちなことしたかっただけ。ついでにおかねくれるから、ラッキー、みたいな」

なんだその理由。僕みたいに金目当てならまだ許してあげたけど、金いらないの?いらないんなら僕にちょうだいよ

「じゃあこの際だから言うけど、もうあいつに近づかないでくれる?僕は金目当てなの、君のせいで僕に入る金が減るのは困るの」
「ええ〜あたしだってえっちなことする相手が減るのは困るよ」

キッと睨むと女は折れた。存外扱いやすい。
どうせわざわざあんな年増の男でなくても、この女にはそういう相手がごまんといるに決まっている。

「じゃああたしとえっちなことしてくれるよね、カイトくん」
「は?」

僕に子犬のようにすり寄る女。その姿はオジサマどもに媚びを売る自分のようで、腹の底から嫌悪が沸いた。