いろいろと最低なので注意





できちゃった。
少し恥じらうように、下腹にそっと手を当てて。
もちろん嘘だ。今日がエイプリルフールなことくらい誰でも知ってる。新開が驚くのが見たくて、わたしはベッタベタなネタを仕込んだ。

「マジで」

新開は想像以上に驚いてくれた。目を見開いて、すこし青ざめた顔。ああでもなんだ、絶望よりの表情をするんだ。まあそれもそうだろう、まだ高校生だし、本当だったらわたしたちは社会的にサヨナラだ。

「ほんとだよ」

新開は頭をかいた。びっくりした?悩むよね、でも今日何日か知ってる?かわいそうだから、そろそろネタばらししちゃおっかな。ねえ、新開、今日なんの日か、

「…ろそっか」

えっ?

「堕ろそう、なまえ」

新開の目は至極真面目で、わたしを真っ直ぐ射抜いてきた。新開はごめん、とわたしの手を握った。その手はひどく汗ばんでいて、初めて彼の手を気持ち悪いと思った。

「ゴムに穴開けたの、謝るから。お金も、なんとかするから。ごめん、でも、堕ろそう」
「何言ってんの?」

ゴムに穴って何のこと?まさか新開、本当に身に覚えがあったの?いつ?
いたずらを仕掛けたのはわたしの方なのに、わたしの頭は混乱していた。えっ、新開、何言ってんの?

「ねえ、嘘だよねえ、今日エイプリルフールだよね、妊娠したっての嘘なんだけど。その、ゴムに穴開けてたってのも、嘘なんでしょ、ねえ」

新開は黙りこんだ。依然としてわたしの手を握るその手から脂汗が染み出してくる。実に不快だった。かすかに震える新開に、わたしは軽蔑の目を向けた。