特にすることもない日曜日、友達に押しつけられた映画を三成と二人で見ていた。ちょっと前に話題になった恋愛映画、病気で余命を宣告されたヒロインが、なんていうありきたりなお涙頂戴ストーリーで正直そんなに面白くなかった。ただ困ったことがひとつある。隣の三成が号泣しているのだ。 「なまえ」 ずずっ、と三成が鼻をすすった。金色の瞳には大粒の涙が浮かんでいて、どんどんあふれてくる。目も鼻も真っ赤だ。普段どんな映画を見てもつまらんだのくだらんだのそればっかりなくせに。わたしは正直ちょっと面食らった。あの映画のなにが三成をここまで号泣させたのか。三成はわりかし泣き虫な方ではあるが、こんなに泣いてる三成は初めて見た。 「なまえ」 また名前を呼ばれる。あんまりにもひどい泣きっぷりがすこし可哀想になって、人差し指で涙を拭ってやると三成はまた鼻をすすった。あーあ、鼻水までこんなに。 「はい、ちーん」 わたしはちょっとふざけて、まるで子どもにするみたいに三成の鼻にティッシュを当てた。怒られるかと思ったら三成は思いっきり鼻をかんだ。なんだ今日は素直だなあ。鼻をかんだティッシュを丸めてゴミ箱に投げようとした瞬間勢いよく抱きしめられた。おかげで丸めたティッシュはゴミ箱をはずれ床にポトン。 「なに、もう」 「死ぬな」 もしかして三成はあの映画のヒロインをわたしに重ねていたのか。ちょっと、ちょっとかわいいけどわたしは超絶健康体だぞ。いつも馬鹿は風邪を引かないだの言うのは三成のくせに。 「私を置いていくな」 自分のセリフにまた涙を誘われたのか三成はさっきよりもひどい涙声だ。私の肩でぐりぐりと涙を拭う。ちょっと、これお気に入りなんだけどなあ。三成の涙と鼻水でぐしょぐしょになるのが目に見えているが、どうにも怒るきにはなれなかった。 「だいじょうぶだって」 子どもをあやすように背中を叩く。三成は情けない声で誓えと言った。わかってるわかってる
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