いつも飄々としている巻島が自転車以外で息を荒げているのは見物だなあ、と思う。彼の右手が扱いているのは私にはない、アレだ。透明な液でてらてらしている、なかなかにグロテスクなそれを間近でじいっと見ていると、私まで興奮の渦に巻き込まれそうだ。
「ねえ、見られると興奮するの?そうなの、ねえ、巻島」
私は今ものすごく悪い顔をしているにちがいない。巻島はぎらついた獣の目を私に向けるだけだった。言いたいことがあるのはまあわかる。オナニーを見せてくれと頼んだのは私だからだ。
くそ、と巻島が小さく漏らした。それと同時に巻島の手の動きが速くなり、私の視線はもちろんそこに釘付けになる。
「っ、はあ」
絞り出すような声とともに巻島がイった。その様子をまじまじと見つめていると、巻島は顔を上げて睨むような目で私を見た。巻島の熱のこもった吐息が顔にかかる距離。息の荒い巻島に向かって私は思いっきり意地悪く笑った。
「なに、してほしいことがあるならはっきり言いなさいよ」
無論、彼が何か言うわけもない。乱暴に私の髪をつかんだ巻島が、私に負けず劣らず意地悪い、ニヒルな笑みを浮かべた。