鏡の中のわたしがものすごく引きつった顔をしていた。それに比べて背後でシェービングクリームとカミソリを握るサスケはニタニタ笑ってとても楽しそうだった

事の始まりはついさっきの出来事だ。サスケはわたしの家に上がるなりわたしを風呂場に引きずり込み、仁王立ちになってわたしに脱げと命令したのだった。なにがなんだかわからないわたしが口をあんぐり開けているとサスケはわたしの服をひっぺがし上半身を丸裸にした。わたしは思わず悲鳴を上げた。サスケが普通じゃないのは知っていたけど、こんな暴漢まがいのことをするようなやつじゃなかった、と思う。あまり自信はない。じりじりにじり寄ってくるサスケは至極真面目に言い放った。
「背中、剃ってやるって言っただろ」

そういえばそんなことを言われたような気がする。言われたわそんなこと。自分は脇毛だのすね毛だのわりかし無法地帯にしているくせに(顔だけ綺麗にしてるのがムカつく)、わたしの背中の毛にケチをつけやがった。そんくらい気にすんじゃねえよ、と内心思ったが女子としてはまあダメだろう。しかもセックスの最中に言われたんじゃ余計傷つく。

サスケは非常に豪快だった。シェービングクリームを盛大にどばっと出してべっちょり背中に塗りたくると、乙女の背中だというのも厭わずにじょりじょりじょりじょり大胆に剃った。ムカつく。優しさとか気遣いとかいうのがまるで感じられない。乙女の背中が傷ついてもいいのか。
「は?乙女?誰がだよ」
「死ね」
全部剃り終わったサスケはとても清々しい、いい顔をしていた。ムカつく顔だった。お陰様で背中はツルツルだが
「お前のすね毛も剃ってやろうか」
サスケの持っていたカミソリをふんだくった。ツルツルのおみ足でドン引きされちまえ、というのがわたしの思惑だったのだが、サスケにはてんで効き目がなかった。サスケはどん、と偉そうに足を出した。

「いいぜ」