長期休みに入ってから今泉と過ごす日が増えて、必然的にそういう雰囲気になることも増えて、でもわたしは頑なにセックスを拒み続けている。生理だとか気が乗らないとか明日早いとか適当に理由をつけて。今泉とセックスするのが嫌な訳じゃない。ただ単におもしろいから。わたしが断ると今泉は苦虫を噛み潰したような顔をするけど無視。存在を主張しはじめた股間が視界に入っても無視。おさめるのに一苦労するんだろうなと心の中で笑うだけ。最近は断るとまるで子犬のような目をするようになった。かわいい。けれど無視。セックスなんてしてやらない。そっちの方がおもしろいから。わたしにセックスを断られたあと、今泉は虚しくオナニーに精を出しているのだと思うと笑えてくる。とてもいい気になる。彼女がいるくせに、もうひと月近くオナニーばかりなんて、おもしろすぎる。

「なあ、なまえ」

苦しそうに切なそうに目を細めておねだりする今泉。とてもかわいい。でもそれじゃあわかんない。あんたいったいどうされたいの?口に出して言えよ。

「もう限界だ」

今泉はがっしり肩を掴んで離さない。わたしはふいっと顔を逸らした。なまえ、と再び言った今泉はようやく観念したようだ。おまえと、セックスしたい。あっそ。無視すると、なかなかにご立腹らしい今泉がギィと歯ぎしりするのが聞こえた。ウケる。
「いいよ。セックスしようか」
「!」
「あっでも、わたしどうせ中出しされるんなら濃いのがいいんだけど」
まあ、中出しなんてさせないんだけどね。素直な今泉が期待に目を輝かせたのが笑えた。ばーか。

「だから、もう一ヶ月オナ禁して」

今泉の落胆した顔!
さっきまで瞳を爛々と輝かせていたのに。こいつはわたしに絶対に逆らえないから、素直に一ヶ月禁欲生活を送ることだろう。笑えてくる。わたしはどうも今泉のがっかりした顔だったり絶望した顔だったりが心底好きらしい。