私に寂しい思いはさせたくないなんて言うくせに、仕事ばかりの奴はどいつだ。私を心から愛しているというくせに空ばかりの奴はどいつだ。だけど私は、それでも私は、グラハムが好きで好きでたまらなかった。私を撫でるその手が好き。柔らかなその金髪が好き。私にキスするその口が好き。エメラルドグリーンのその目が好き。詩的な言葉を乗せるその声が好き。空を語る雄弁なあなたが好き。私を抱くときの余裕のない顔が好き。あっけらかんと笑う顔も好き。頬ずりをくれるあなたが好き。全部、全部、好きなのよ。 隣でグラハムは眠りこけている。もともと彼は童顔だけど、寝顔は余計幼く見える。どうせ朝にはまた出て行ってしまうのだろうけど、私はもうそれでもいい。帰ってきてくれるのならそれでいい。 「あいしてる」 そんな言葉じゃ足りない。グラハムはよくそう言ったけど、それが比喩でも誇張でもないのは私も同じよ。もっとこの気持ちを伝えられる言葉があればいいのに。人間っていつの時代も不器用ね。グラハムの柔らかな髪に指を通した。 「なまえ?」 眠りの浅いグラハムは、少しちょっかいをかけるとすぐに起きる。むくりと起き上がったグラハムが私の頬を撫でた。 「どうしてそう、物欲しそうな顔をしている」 はにかんだグラハムに抱きついて、寝起きのグラハムの匂いを思い切り吸い込んだ。私はこの匂いがたまらなく好き。少し変態くさいけど。 「甘えん坊、だな」 「あなたのせいよ」 優しく背中を撫でてくれる彼に、朝なんて一生来なければいいのにと思う。
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