キスをしよう、と思い立ったらすぐに彼女の唇にがっつけるほど俺はスマートではないのだと最近気付いた。キスをしようかな、大丈夫だろうか、この雰囲気だったらイケるんじゃないだろうか、などといろいろ考えに考えてようやくキスが出来る。我ながらまあ情けないとは思うが世の高校一年生なんてそんなもんじゃないだろうか。ちなみに今、俺はちょうどキスをしようかしまいか延々と考えている最中だ。
わざわざ部活を待ってくれていたなまえを送り届けて、人気のない通りの中。雰囲気としては悪くない。なまえの機嫌は?いつもとなんら変わりはない。いつもより口数が少ないような気がするが、大丈夫、イケる。たぶん。俺は彼女の肩をやんわりと掴み、なるだけ甘い雰囲気になるように、慎重に、
「だめ」
えっ。なまえの手のひらは俺の顔面をぎゅうと押し返し、こないでをしている。えっ。要するに拒否られた。思いっきり。
「な、」
「やだ」
いやだとまで言われてしまい俺の心はずたずたである。そんな、うそだろ。なまえはかなり気が強い方であるが、流石にここまできっぱりと拒否されたことはない。もしかして、嫌われた?うそだろ。あ、やべ。涙出そう。
「なん、で」
「…口内炎痛いからだめ。したら殺す」
え、ええ、えええ。なんだその理由は、口内炎て、ていうか嫌われてない?俺嫌われてないよな?はあ、とりあえず、まあ、よかった、のか。俺はなまえになにか嫌われるようなことをしたのだろうか、とか身に覚えはないがとりあえず全力で謝ればなんとかなるのではないか、とか俺となまえの関係は今日で終わりなのか、とかいろいろ考えた自分が馬鹿みたいだ。
「泣くなよ俊輔、だせえ」