今キミんちの近くにいるんだけど出てこれない?これるよね、コンビニで待ってるから。とかなんとか狛枝に強制的に呼び出されたので寒い中渋々コンビニに向かった。さっき帰ったばっかりなのにふざけんなこの野郎という思いが八割以上を占めたが私は優しいから行ってやろう。ていうか行かなきゃ後が怖いし。なにされるかわかったもんじゃない。
「やあ、みょうじさん」
「やあじゃねえよ」
コンビニの前で突っ立ってた狛枝は肉まんを頬張っていた。狛枝の鼻の頭は寒さのせいかほんのり赤い。
「まっ…たくキミは、…つれないね」
「食いながら喋るな」
ごくんと口の中のものを飲み込んだ狛枝がへらへらと笑った。お前肉まん似合わねえな。半分になった肉まんを、奴はぐいっと差し出してきた。
「食べる?」
「いらない。食いかけじゃん」
「残念。間接キス出来ると思ったのに」
「…今更間接キスとかしたい訳?で、何の用なの」
残りの肉まんに口を付けかけた狛枝が目を丸くした。相変わらず小さい一口だ。こいつならこの肉まん一つで三十分以上は時間を潰せるだろう。
「用がなきゃだめなの?」
「そういうことだろうと思った」
「あはは、バレてた?それでも来てくれるなんてキミは優しいんだね。別にこのままキミんちに行こうとかは考えてないし、そろそろ帰ろうかな」
嘘だ。家に上がり込む気満々じゃないか。
「……」
「本当だよ?嘘じゃないよ」
「…いいよ。来なよ。どうせ暇だし誰もいないし」
狛枝の表情がぱあっと明るくなる。まあ狛枝も冷えて可哀想だし。鼻を赤くして白い息を吐く狛枝は線が細いのもあって放って置くと死にそうだ。ロクに着込みもしない奴の自業自得だけど。
「ありがとう。やっぱりなまえは優しいね。そういうところ好きだよ」
「はいはい」
「寒いと人恋しくなるんだよね」
「あっそ。あ、ぜんざい作ってあるから、あっためてあげるよ」
「…ごめん、ぜんざい嫌いなんだよね」
この偏食野郎め。人の好意をなんだと思ってるんだ。
「ごめんね」
「食わす」
「ええっ」
「うるさい。来るならさっさと来て」
狛枝の手から肉まんを奪いその手を取った。完全に冷え切っている。口にくわえた肉まんも。手をつなぐの久しぶりな気がするね、と狛枝は私の手をぎゅっと握って笑った。返事をしないのを肉まんのせいにしてちょっとだけ手を握り返してやると狛枝は心底嬉しそうだった。寂しかったならそう言えばいいのに。