静寂の中に水音が響く。凪斗は私の唇を舌を吸うのに夢中で、私は彼にされるがまま。息苦しさに負け彼の胸板を押しても凪斗は我関せずと気にかけもしない。頭がぼうっとしてきた。
「ん、くぅっ…、はぁっ」
やっと開放され小さく肩を揺らす私を凪斗はにっこりと見つめている。ふふっと声を漏らして唇を舐める余裕そうな態度が若干癇に障った。
「なまえ、かわいいね」
両頬に手が添えられた。心なしか凪斗の手はいつもより幾分か熱を持っている。綺麗な弧を描く唇に視線をやると欲しいんだねと彼は言った。違う、べつにそういうわけじゃ、ない。そう思ったのは一瞬だけで、すぐに凪斗の唇が恋しくなってしまった辺り、私は彼に手懐けられている。
「ねえなまえ、こうするとよく音が聞こえるんだよ。知ってた?」
凪斗の手が私の両の耳を塞いだ。卑猥な水音が直接頭に響く。唇の端から漏れる声に従い凪斗ににじりよった。彼にも同じことをしてやろう。