夜、眠れなくて眼蛇夢くんのコテージを訪れた。恐る恐るチャイムを鳴らすとなにやつ、と眼蛇夢くんの低い声。
「がんだむくん、あのね」
滑車を回すサンDとチャンPに目を細めていた彼は律儀にも戸を開けてくれた。眠れなくて、という私の言葉に目を丸くした寝巻きの眼蛇夢くんの肩にはジャンPとマガG。よし、ちゃんと破壊神暗黒なんとかの名前覚えたぞ。
「フハハハ深淵の闇に阻まれたとのたまうか貴様の様なたかが人間が!クックッ…致し方あるまい、特異点である貴様は特別だ…、俺様は今機嫌もいいことだしな。入るがよい、いざ我が神殿に!」
「ちょっ、ちょっともう遅いから静かに…」
わかったから入れということらしい。なんだかんだで優しいのだ彼は。
コテージに入ると眼蛇夢くんはホットミルクを作ってくれた。眼蛇夢くんと四匹のハムスターの瞳にじいと見つめられるので些か緊張したけど、ホットミルクと眼蛇夢くんの優しさが身に沁みた。
「気が済んだら早急に漆黒で身を休めるがいい」
「うん、ありがとね、眼蛇夢くん」
これから寝る眼蛇夢くんの邪魔をしてもいけないし、とコテージを去ろうとすると眼蛇夢くんが私の腕を掴んだ。
「おい」
彼の表情はいつもと変わらないがどことなく気恥ずかしそうに見える。
「別に帰ることは、ないだろう…」
「え、う、うん」
熱が顔に集まるのがわかる。嬉しいのと恥ずかしいのがいっしょくたになってなんだか変な気分だ。
「は、早く眠る努力をしろ」
眼蛇夢くんはそう言うと私をベッドに寝かせた。あ、そういう…。複雑な気持ちになる私をよそに眼蛇夢くんはいそいそと私の横に潜り込む。そして私を引き寄せると子供をあやすようにぽんぽんと、私の肩の辺りを叩き始めた。
「が、がんだむくん…?」
「うるさい、ちがう、これはだな」
眼蛇夢くんはこうすると魔獣も大人しく寝るのだのなんだのぼそぼそとなにかを言っている。ほんのり頬を染める眼蛇夢くんはいつものように首のマフラーに顔を埋めようとしたのだけれど、寝巻きの彼の首にはいつものマフラーはなくて。ますます頬を赤くした彼のその様子がかわいくてふふっと笑みがこぼれた。