潔癖症という割に兵長は頻繁にそういうことを求めてきた。死の淵に立つと子孫を残そうとする本能が働くと聞いたことがある。兵長の見かけによらない性欲はそのせいだろうか。
兵長は些か乱暴ではあったが私も悪い気はしなかった。あの兵長が夜な夜な女と事に及んでいるなど誰が思うだろう。そう考えると少し誇らしくもある。
「おい」
低い声。考え事をするなと目が言っていた。睨まれさえしたが大して怒ってはいないようだ。軽く謝ると兵長の顔が近付いてくる。壁に押しつけられた私に逃げ場はない。逃げるつもりもなかったが。
「いいんですか」
「何がだ」
「だって兵長潔癖でしょう」
「今更だな」
「ずっと不思議で。キスとか平気なんですね」
「…嫌なのか」
「別に」
私も今日はそういう気分なんで。そう言うと兵長は満足そうに鼻を鳴らした。案外扱いやすい。
侵入してくる生暖かい舌。腰を撫で回す兵長の手も熱い。悪い気はしない。ただ性急で、息がつまるようだ。
「兵長、」
「黙ってろ」
ブラウスのボタンに手をかけられる。
「せめてベッド行きませんか」
「うるせェ女だな」
兵長は突き飛ばすように私をベッドに組み敷いた。もっとやり方があるだろうに。口答えが無駄なことはとうに学習済みであるから、全てを彼に委ねることにして私は目を閉じた。