彼女は俺の小さい頃のアルバムに夢中になっていたが、俺はというとそんな写真に目を向ける気にはならなかった。そもそも自分の写真などに今更興味はわかないし、そんなことより目の前でアルバムを見ながらはしゃぐみょうじが気になって仕方がない。可愛い。シャンプーの甘い香りもする。
「写真撮るときむすっとするのは昔からだね」
彼女は笑ってそう言ったがロクに返事もしない。俺は曖昧な頷きを返すだけで当時小学生の自分など眼中にはなかった。
みょうじが可愛すぎるのが、みょうじが写真の俺にばかり夢中なのがいけないんだと言い訳をして唇を奪った。唇からも甘い香り。写真の俺なんかより、と言いかけたところでみょうじがくすくす笑った。
「福富かわいい」
やきもち?、と彼女は言う。その通りかもしれない。自分に嫉妬など滑稽な。脱色した俺の髪に触れるみょうじの手がくすぐったい。