水族館なんて久し振りに来たよ。三歩前を歩く彼の猫背に投げかけた。のっそのっそと歩く彼はその言葉に見向きもしなかったが。
「ねー待ってよみどーすじー」
「…ペンギン」
御堂筋の口から発せられた単語に思わず吹き出しそうになる。つくづくかわいらしいものの似合わない男。
「あとでいーよ、せっかく来たんだからゆっくりまわろうよ」
「触れるで」
「何に?」
「ペンギン」
御堂筋はこちらにぬっと近寄ってきてパンフレットを指した。13:00〜、ふれあいペンギンショー。時計を見ると一時まではわずかに五分。
「行かんでええの?」
「行く!」
「…はよ」
御堂筋にぐっと手首を掴まれた。そのまま御堂筋は大股でずんずん歩いていくので、着いて行くのがやっとだったが、歩いていくうちに私の手首を掴んでいた御堂筋の手はいつの間にか私の手のひらを握っていた。