一度出た布団に戻っても、中は暖かいままであるのは妙な感覚だ。でも頬は緩んでしまう。幸せってこういうことなんだろう。一緒に寝ていた彼を起こすまいとそうっと布団に入ると、眠そうな声で名前を呼ばれた。声の主に向き直ろうとするとぬっと長い腕が伸びてきて、やんわりと抱きすくめられる。
「どこ行っとったん」
「トイレ」
なんそれ、と翔くんが項に顔を埋めた。それっきり何も言わなかったから、多分寝てしまったんだろう。抱き枕にされてしまって身動きが取れないし、私も寝てしまおう。暖かい布団のせいで、夢の中へ落ちるのに時間はかからない。