太った。この世の終わりみたいな顔して彼女は言った。女はどうして体重の増減で一喜一憂出来るのか些か不思議だ。100グラム単位で気にしなくても、と思う。
「何キロ?」
「言わねーよ」
心なしか昨日より一回り小さいお弁当箱をつつくみょうじのほっぺたをつついた。ふにっと柔らかいのはいつものことで、決して肉付きがよくなったようには思えないが。
「そうは見えないけど」
メロンパンをかじる俺を、みょうじはじっとりと睨んだ。多分これが五個目だからだろう。お腹空いてるんだから仕方ないじゃないか。彼女は既に小さな弁当箱を空にしていた。
「胸がおっきくなったんじゃない?」
「…死ね」
積み上げた空のパン袋を投げつけられる。ここであんまり気にすんなよ、なんて言っても新開はわかってないと言われるのがオチだ。ある程度むっちりしてくれる方が好みであるのは隠さないが。俺としては、彼氏としてダイエットを応援するよりも放課後みょうじを買い食いに誘う方を推したい。