外では容赦なく雨が降り注いでいる。朝はあんなに晴れていたのに。クラスメイトたちも朝のあの晴天の所為でこの土砂降りの餌食になっていると思っていたが、天気予報でも見ていたのか皆傘を片手に帰路についている。下駄箱で呆然と外を眺める。これはもう、腹を括るしかない。合皮の鞄は水を通さないだろうし、置き勉ばかりで特に濡れて困るものも入っていないし。
「誰待ちっショ」
後ろから声をかけてきたのは同じクラスの巻島だった。どんよりした空気に彼の派手な髪は些か不似合いだ。手には黒い折り畳み傘が握られている。畜生。
「いや、べつに」
それより部活は、と聞けばないの一言。そりゃそうか。サッカー部も野球部も、今日に限っては中止のようだし。
「雨ひどいな」
「嫌味?」
「…いや」
巻島が靴箱を開ける音がする。革靴を乱暴に叩きつけたのか、続いて雨の音に混じって小気味よい音がした。
「入るか」
ぶっきらぼうな巻島の声。巻島は隣で折り畳み傘を開いていた。
「え、や、いいよ」
「朝までこの調子らしいショ」
「………」
既に帰る人はまばらになってきていた。
「ほら」
行くぞ。断りきれなかった私の腕を巻島は乱暴に引いた。