今泉が嫌いだ。スカした態度もムカつくけど、何かにつけて突っかかってくるのがもっとウザい。ちょっと顔がいいからって調子乗んなよ。心底そう思っているのに今泉親衛隊とやらからは、ちょっと今泉くんに構ってもらってるからって調子乗んなよ、と言われる始末だ。不服。いやいや、調子乗ってるのはどう考えても今泉だから。
「あのさあ」
放課後、今日も飽きずに突っかかってくる今泉に、いい加減一言言ってやろうと口を開いた。
「なんだよ」
「絡むんなら他の子にしてよ、私のこと嫌いなら関わんないでくれる?アンタ親衛隊とかあるんでしょ、その子たちでいいじゃん、迷惑被るのはこっちなんだからもう関わんないで」
言ってやった。言ってやったぞ今泉俊輔。どうだ。今泉は目を丸くしている。フフン。そして格好良く教室から出て行けば完璧だ。明日からは快適なスクールライフが待っているに違いない。
「おい」
振り向いてやるかよ、バーカ。
「おい、みょうじ」
フン。お前が悪いんだバーカ。
「みょうじ、待てよ」
背後に足音を感じたと思ったら、腕を勢いよく掴まれた。は?掴まれた手首が痛い。
「何よ」
「好きなんだ」
「はい?」
今泉の言葉が理解できない。クラス中の視線が集まるのはわかった。視線が痛い。
「好きなんだよ」
「だから、」
「お前が、好きなんだ」
今コイツなんて言った。脳が思考を拒否している。だが三度も言われれば流石に言葉の意味くらいは嫌でも理解できた。
「ば、ばっかじゃないの」
俺は本気だ、と言う至極真面目な今泉を直視できなかった。