いつもは閉じている資料室の扉が開いていた。中を覗いてみればみょうじが二つほど重ねた段ボールに無理矢理登って高い棚の上の教材に手を伸ばしているではないか。危なっかしい。体を折って資料室に入った。
「これか」
うんうん唸るみょうじの横からそれらしいものを手に取った。俺の存在に気付いてすらいなかった様子のみょうじは目を丸くしている。
「越知くん」
「危ないだろう、無理をするな」
飛び抜けて高い俺の背丈なら、踏み台を使う必要もない。後は俺がやるから、とみょうじに下りるように言った。
「ごめんね」
「構わん」
指定された教材を取り終えても、みょうじは不安定な段ボールに乗ったままだった。下りろと言ったではないか。
「…下りないのか」
「越知くんに近づけたかなって思ったら嬉しくって」
照れくさそうに笑うみょうじ。ああ、なんだ。下りるのを手伝おうとするとやんわりとかわされキスをされる。やり場のないくすぐったいようなこの気持ちは、どうしたらいいのか。