「福ちゃん」
慣れない呼び名を口にしてみれば、鉄仮面は眉をぴくりと動かして、私に視線をやった。
「どうした」
「あ、いや、そろそろ苗字呼びもよそよそしいかなー、と」
付き合って半年になるんだしさ。福富は表情を変えない。考え込んでいるのか、そうじゃないのか、くらいはもう大体わかるようになったけれど今はどうだろう。
「嫌だった?」
「…いや」
荒北を真似してみたんだけど、ダメだったかな。トミー、とかは流石にないし。
「寿一でいい」
思わぬ言葉に驚いて、福富を見ると逸らされた顔はほんのり赤くなっていた。寿一、寿一。小声で繰り返してみると彼は照れくさそうにやめろ、と言うのだ。