みどうくんと一緒に帰るこの時間が好きだ。会話は極端に少なくて別れるまでほとんど喋らないなんてザラだけど、なんだか落ち着く。彼の部活を待ってるあの時間も好きだけど、やっぱり一緒にいる時間には変えられない。
「なまえちゃん」
猫背で細っこいみどうくんを見上げる。黒黒した目が少しだけ私を見つめた。みどうくんから話しかけてくれるなんて。風が冷たい。すっかり冬だ。シンプルなマフラーのみどうくん、髪はだいぶ伸びたけれど頭はまだ寒そうだなあ。
「なまえちゃんって、おかしなやつやな、やっぱり」
「そう?どのへんが?」
「ボクと一緒におるとこ」
じいっとみどうくんを見ても、みどうくんは前を見据えたままだった。
「だって好きなんだもん」
「それがおかしいって言っとるんやけど」
「変なみどうくん。好きなものは好きなんだもん、理由なんてないよ」
ね、と微笑むとみどうくんは照れくさそうに目をそらした。また沈黙の帰り道に戻る。手袋を忘れたせいで手がかじかんできた。冬だ。足音と風の音だけが暗闇に響いている。無性に心地よかった。
「手、寒ない」
ちょっと寒い、そう言って細くて骨ばったみどうくんの手に指をからめた。手袋をはめたみどうくんの手は、お世辞にも暖かいとは言えないけれど。
「反対は」
「ポッケ入れるからだいじょうぶ」
「そか」
彼は少女漫画のワンシーンみたいに片方の手袋を貸してくれる気だったんだろうか。そう思うと笑みがこぼれて、やっぱりこっちの手も寒いよって言えばよかったかなって少しだけ思った。