手塚なんて嫌い。テニスなんてなくなっちまえばいいのに。後者はわりと本気で思うことがあったけど前者は大嘘だ。嫌いなのはテニスしてる手塚がどうしようもなく好きでテニスなんかに嫉妬してる私だ。でも意地っ張りな私はそう言って手塚を困らせてしまう。大好きなのに。テニスしてる手塚が、手塚の低い声が、手塚の大きな手のひらが。うっかりそう言ってしまったとき、手塚は悲しそうな顔で俺はお前のことがこんなにも好きなのにな、なんて殺し文句をほざくのだ。わかってるくせに。思わずごめんと言ったら唇を寄せてくるあたり、手塚は私がテニスに嫉妬して、嫌いと言うのを楽しんでいるんじゃないだろうか。どうしようもないやつ。そんな手塚を好きな私はもっとどうしようもない。