ねえ聞いて、俺ね、なまえのこと好きだよ、大好きなんだ。ずっとなまえのそばにいたい、いっしょにいろんなことがしたいんだ。あのねなまえ、なまえは俺が委員長のこと好きだって思ってたでしょう、違うんだ、違うんだよなまえ、俺はなまえのことが好きなんだ。君とキスしたり抱きしめあったりしたい。もちろん委員長のことは好きだけど、俺がそういうことしたいのは君だけなんだよ、わかって、わかってよなまえ、愛してるんだ、嘘って言わないで、大好きなんだ…。
 真波の言葉が呪詛のようだ。私をちくちく刺して、痛い。涙ばっかりこぼれ落ちる。委員長が親友なのが憎い。委員長が真波を好きなのが憎い。頬を撫でで涙を拭う真波はもっと憎い。私のことなんて好きになるなよ、委員長がいるじゃないか、涙のせいで声も出ない。
「ごめんねなまえ、泣かせるつもりなんて」
「ばか」
「でも本当なんだよなまえ」
「名前で呼ぶな、名前で呼ばないで」
「…みょうじ、ごめんね」
 私を苗字で呼んだ真波の声は、自分の嗚咽にかき消されてあまり聞こえなかった。なんで泣いてるのかもわかんなくなってきて、気持ちはぐちゃぐちゃで、気持ち悪い。真波が優しく私を撫でるのに、甘えたくもない。
「真波のばか、最低だよ」
 真波が泣きじゃくる私を抱きしめた。ここでこいつを突き飛ばして逃げてしまえばそれでお終いになるだろう。なのに私は真波の背に手を伸ばした。なんだ、最低なのは私じゃないか。