やっぱりまだ柳生が好きだから、と成り行きで付き合い始めてからずるずる関係を続けていた仁王と別れてしばらく経ってからも、私は仁王と連絡を取り続けていた。絶対そんなことしない方がいいのに、仁王の方からお前を忘れたくないからとメールをくれた。本気で好きじゃなくっても、仁王は私の心許せる数少ない人だったし、大切な人だった。
 だから柳生と再会した時、どうしたらいいかと相談したのも仁王だった。柳生はおまんのこと絶対嫌いになんかなってないから、と仁王は私の背中を押してくれた。仁王はどこまでもやさしい。なんでこんなにやさしいんだろう。こんな仁王だから、最後に一度キスがしたいというお願いを断る理由なんてなかった。
「またなんかあったら言いんしゃい、俺はいつでもおまんの味方じゃき」
 仁王がこんなだから、私はきっといつまでも仁王に甘えてしまうのだろう。柳生がいなかったら私は仁王を愛していたんだろう。仁王も私のことを力づくで奪ってくれたらよかったのに。柳生に抱かれながら仁王がちらつくのは、詐欺師な仁王の思惑なんだろうか。