誰かの名前を呼ぶ東堂くんの声はいつだって軽やかで大きかった。あっけらかんとしていて快活な彼。うるさいくらいに。それでも不思議と嫌にはならない、そんな人。あんまり話したことはなかったけど、そんな彼にこっそり思いを寄せていた。でも彼は人気者で、カッコよくてモテるから私なんて範疇にないんだろうな、そう思っていたから私の恋心は薄れていって、昔みたいに頭の中が東堂くんでいっぱい、なんてことはなくなった。恋心はただの憧れ以下になって彼の姿が目に入ったたまにだけ、やっぱりカッコいいなぁ、って思う。それだけ。だって東堂くんたらいつも女の子に囲まれているんだから。私なんかが無理だって嫌でも思っちゃうでしょ。
「みょうじ、話があるのだが」
放課後神妙な面持ちの東堂くんに呼び止められてギョッとした。あの東堂くんが、私に用なんてありえない。
「もしかしたらみょうじは薄々気付いているかもしれんが」
東堂くんが目の前にいる。それだけで胸がドキドキする。ドキドキしすぎて東堂くんの言うことがぼんやりとしか頭にはいってこない。
「ずっと好きだったんだ、私でよかったら付き合ってくれ」
聞き間違いかと思った。というより、完全に聞き間違いだと思った。東堂くんが、私を、好き?
「え?」
「あれだけ見ていたからな、知っていたか、ハハ、すまんね。だがこういうものは面と向かって言うものだと思ってな。どうだろう、返事を聞かせてくれないか」
信じられない、ありえないよ。東堂くんが私のこと好きだなんて。嬉しい、夢みたい。言葉が思うように出てこない。伝えなきゃ。
「わ、私も、すき」
東堂くんがバッと私に抱きついたことに私はしばらく気付けなかった。嬉しいぞみょうじ、よろしくな、大好きだ!弾む東堂くんの声に、私はもう死んでもいいとすら思った。