触れるだけだと思ったのに、上唇を下唇を甘噛みされて背筋がぞわりとした。吐息が直に当たるような距離で名前を呼ばれて思わず逃げ出そうとすると腰をがっちりと抱えられた。ああなんだか、むずがゆい。
「逃げるなよ」
「だって、ちょっと、今泉」
気持ち悪いよ。その一言で今泉の動きは止まった。言い過ぎたかな、いやでもだって気持ち悪いんだもん。なんかガツガツしてて、怖い。すうっと腰を撫でてくる今泉が、なんだか違う生き物みたい。
「俺が、こんなことしちゃだめなのか」
「だ、だめってわけじゃなくて」
じゃあ、とまた深いキス。薄目を開けると、今泉くんの端正な顔が目に入った。これでブサイクだったらぶっ飛ばしてたのに。
やっと唇が離れて、新鮮な空気が肺を満たす。息苦しさから解放されて、私は大きく息をついた。今泉はまだ私の腰をがっちり掴んで離さない。
「俺だって男なんだ」
またキス。
「こんなふうに、お前を抱きたいときもある」
普段はヘタレのくせに。ただちょっとそのセリフにきゅんときてしまったので、今日のところはイケメンに免じて許してやろうじゃないか。

▼甘めの今泉