世間は温暖化温暖化と騒がしいくせに、この寒さはなんだ。これでもかと着込んでいるのに冷たい風は容赦なく吹き付けてきて凍えそうだ。私立だから教室に暖房がついてはいるのだが、換気だと言って休み時間はこのクソ寒いのに窓が開け放たれている。寒い。腹が立ってきた。
「みょうじさん」
前の席の新開がやたら機嫌よく振り返ってきた。寒さでイライラしているわたしはそれはそれは感じ悪い返事を返したのだが新開は気にも留めずニコニコしている。
「カイロ、いる?貼らないやつ」
新開が救世主に見えた。
「いる、いる、はやくちょうだい」
「はい」
新開の手の上にある貼らないカイロに手を伸ばすと、新開はわたしの手ごとぎゅうと握ってきた。うん、うん?
「えっ、ちょ、なに」
「俺の手暖かいだろ」
確かに新開の手はとてもあったかかった。これ明らかカイロのせいだよね?ていうか、そういうことじゃない。
「な、なんなの…」
「ん?」
ちょうどそこでチャイムが鳴った。窓が閉め忘れられているというのにわたしの手はいつまでもあったかかった。

▼新開と暖をとる