風が頬を切る。冷たくて気持ちがよくて、わたしは目をつむった。自転車はいつもより軽やかに進んでいく。わたしが歓声を上げると東堂ははりきって力強くペダルを回した。
「わー!東堂はやーい!」
「だろう!」
東堂がいつも乗っているそれよりだいぶ重くて大変だそうだが、自転車はぐんぐん進んでいく。一気に速まったスピードに私は少しびっくりして、思わず東堂の腰にぎゅっと抱きついた。すると自転車はキキーッと急ブレーキ。もっとびっくりした。
「わっ、どしたの」
急ブレーキがかかったせいでわたしの顔は東堂の背中にぎゅうと押し付けられた。制汗剤のにおいがうっすら鼻をかすめる。
「いや、すまん、なんでもない」
ちらっとこっちを向いた東堂の顔が赤かったのは、めいいっぱい自転車を漕いだせいじゃなさそうだ。

▼彼女と二ケツする東堂