「オイ、また来たのかよ」
「なによ、悪い?」
何食わぬ顔で俺の部屋に居座るこの女に合鍵を渡したのが運の尽きだった。帰ってきたら我が物顔で寝転がっているのが日常茶飯事。掃除だの選択だの炊事だの、家事をやってくれるような家庭的な女だったらどんなによかったか。それなら寧ろ大歓迎である。だがこの女はそんな家庭的な面など微塵も持ち合わせておらず、部屋を散らかし飯をたかり、挙句の果てにはどこかに連れていけだのとねだる我侭でロクでもない女なのだ。俺はとうに期待するのをやめた。
「靖友ぉ、ごはんは?」
「…何がいい」
「チャーハン」
簡単なメニューをリクエストされただけ有難く思おう。昨日炊いた米もまだ残っていたはずだ。キッチンに立ち下ごしらえを始めると、なまえがのそのそとやってきて腰に腕を回してきた。
「ンだよ」
「…ねえ、明日もいていい?」
「…好きにすればァ」
背中に頬ずりをしてくるなまえを突き返すことが出来るはずもなく。
「家賃勿体ねえから、たまには帰れヨ」
「うん、わかってる、けど…」
一人じゃ寂しくて寝られないの、だってよ。ふざけんな。でもまあ、悪い気はしねえよ、な。

▼荒北とわがままヒロインの半同棲