それを聞いた瞬間顔が青ざめてゆくのが自分でもわかった。廊下でクラスメイトのしていた他愛もない会話を、拾ってしまったこの耳が恨めしい。ああ俺は、あいつをものわかりのいい一途な子だと思いすぎていたんだ。俺が部活にかまけたばっかりに。でも、あいつは、俺のことあんなに好きじゃないか。あんなに俺のことを気にかけてくれるじゃないか。あんなに、あんなに俺のことを。あれは、いったい、なんだったんだ?俺はこの先、どうしたらいいんだ?俺はあいつなしじゃあとてもやっていけそうもない。やっていけそうもないのに、あいつの愛を盲信して、それを理由にあいつをないがしろにした俺が悪いのか。いやでも、なんでだ、俺はいったい、どうしたらいい。

「なあ、みょうじって年上の彼氏に貢がせてるらしいぜ」
「はあ?あいつって新開と付き合ってるんじゃねえの」
「ほら、新開って部活ばっかだろ。飽きたんじゃね」
「あー、あるな。チャリ部はしょうがないだろうけど…。あ、そういえばみょうじ援交してるって噂聞いたことある」
「俺も聞いたわ、マジっぽいぜそれ。結構有名だよな。こりゃ新開捨てられたなあ」

▼焦る新開