愛されてるなあと感じるのは、みょうじが俺を見て逐一照れるときだ。目が合えば、微笑めば、指先が触れれば、名前を呼べば、熟れたりんごみたいに真っ赤になるみょうじがかわいくてかわいくて仕方なかった。俺の名前を呼ぶ声すらたどたどしくて、俺を見る目がやたらに泳ぐのが微笑ましくて、思わずみょうじの頭を撫でるとまた赤くなる。かわいいなあ、と本音を漏らせばもっと。ただあれだけ照れ屋だと、進展できそうもないので困る。俺としてはみょうじにこんなことやあんなことがしたい。急いて嫌われてしまっては元も子もないので強要する気はさらさらないが、俺とて思春期まっただなかの高校生、恋人らしいことがしてみたい。だから今日は手をつないでみようと思うのだ。いろいろ考えた結果、了承を得る前に行動に移してしまうことにした。手をつないでいいかと聞いて断られたら俺としてもやっていけない。ちいさな歩幅で歩くみょうじの手にするりと自分の手を絡めてみると、みょうじの身体がびくんと跳ねた。つられて俺の心臓も。
「て、手嶋くん」
真っ赤になったみょうじがおそるおそる俺を見上げる。上目遣い、ああ、かわいい。俺まで赤面しそうであるけれど、ここは平然を装う。ここで俺が照れてしまってはまったく情けないではないか。
「いやだった?」
「いっ、いやじゃ、ないよ…」
これでもかと真っ赤になってしまったみょうじは俯いてしまったが、振り払われなかっただけ大満足だ。ただ俺まで緊張して、手汗が染み出てこないか心配である。でもいいや、みょうじがとてもかわいい。
かわいい。
「ありがとう、今度みょうじがもっと照れるようなことしてもいいかな」

▼手嶋と照れ屋な彼女