俺はどうしてこんなにも口べたなのかと、自分自身をぶん殴りながら小一時間問い詰めたかった。話題選びが下手とかそういう次元じゃなくて、言葉が出てこないって、言葉が出てこないってどうなんだ。みょうじはさっきから黙りこくって縁石の上を渡るのに夢中になってしまっているじゃないか。縁石に上っても俺より小さい、かわいい、ってそんなこと今は問題じゃない。なにか、話さないと、まずい。さっきまでみょうじは俺にあれやこれやと話題を振ってくれていたのに、今それはないってことは、まずい。全部おれがわるい。ああとかうんとかそうだなとかなんでそんなことしか言えなかったんだろう、みょうじが昨日食べたハンバーグがおいしかったって言うのに、そうかはないだろう、俺もハンバーグはすきだとか、そういえばどこそこのなにがうまいとか、なんかこう、もっと、あったろう。馬鹿か。
「みょうじ、」
とりあえずこの状況をなんとかしたくてみょうじを呼んでみたのはもっとまずかったかもしれない。話題が出てこない。聞きたいことは山ほどあるのに、なんでか言葉が出てこない。ああ、どうしよう。そんな俺の視界の端を野良猫が通った。あ、そういえば、
「猫のキンタマってすごいかわいいの知ってるか」
おれはばかだ。なんてこと言うんだ俺は。昨日いくらそれで田所っちと盛り上がったからって女子に向かってキンタマって、いくらなんでも、よりによってキンタマはないだろう。しにたい。今すぐ消えたい。みょうじが目をぱちくりさせて俺を見てる。ああ、引かれた。終わりだ。もうおしまいだ。
「ぶっ」
みょうじが吹き出した。ああ、もうおしまいだ。笑いものだ。もうだめだ。
「巻島がそんなこと言うの意外すぎ。ていうかあたし初耳だよそれ!超見てみたいんだけど!ねえ、暇なら今からペットショップ行かない?」
えっ

▼話を盛り上げるのが下手な巻島