「ゆるして、ゆるして」
そんなことを言ったところで真波が聞く耳を持たないことくらいはわかっている
「なまえはさあ、自分が誰のものかちゃんとわかってるの」
その辺にあったゴミ箱が、蹴っ飛ばされてカーンと音がしたのが遠くに聞こえた。真波怒ってる、真波、怒ってる、ごめんなさいごめんなさい
「………」
床にべたんと座り込むわたしの、瞳をじいっと見つめる真波。わしゃわしゃと頭を撫でられて、ぐっと髪を引っ張られ、がんと額が額にぶつかった。
「ほかに、なにか、言うことは?」
「…わたし、ちゃんと真波に叱られないような子になるから、」
「うん、いい子」
ああ、真波の手はあったかくてやさしいなあ。

▼黒い真波