東堂はよく喋る。これでもかというくらいに、よく喋る。クラスメイトのこと、面白い先生のこと、部活のこと。荒北がどうの福富がどうの。あとはだいたい巻ちゃんのこと。私はその巻ちゃんさんとやらと面識は全くないが巻ちゃんさんのことに異様に詳しくなってしまった。千葉の総北高校の三年生で、東堂と同じ自転車部でクライマー、なんとかスパイダーみたいなあだ名があって、あと緑に赤のメッシュが入ったやたらと派手なロン毛で、口下手で、家がデカくて、グラビアが好き。あーもう、フツー彼女の前でそんなに他人の話するかな。ほら今だって、巻ちゃん巻ちゃん巻ちゃん巻ちゃん。いいかげんにしてよ、もう。
「東堂」
振り向いた東堂の口をキスで塞いでやった。目をまん丸にする東堂。してやったり。
「ちょ、みょうじ、」
「あたしの前であんまり巻ちゃんの話しないでよ」
ぽかんとした東堂は変な間のあと頷いた。そして何か考え込んだあと、
「嫉妬か!嫉妬かみょうじ!」
「そうだけど、悪い?」
「お、おう…そうか…」
あんたが照れんなよ

▼弾丸トークの東堂をキスで黙らせる