縁側でぼうっと空を眺めているシカマルはますますお義父さんに似てきた、と思う。元から爺臭かったシカマルは、最近やっと年が中身に追いついてきたといった感じだ。きょうはやたらとうれしそうなシカマルの横顔を見てそんなことを思うと、ふっと笑みがこぼれた。
「なに、笑ってんだよ」
「だって。なにがそんなに嬉しいのよ」
「んや、夢が叶ったなあと思って」
夢?めんどくさがりやのシカマルに夢なんて、なんだか似合わない。ふふっと笑ってしまったわたしにシカマルはちょっとムッとしてみせたが、すぐに穏やかな表情に戻った。
「ブスでも美人でもないフツーの女と結婚して、子供は二人、女の子と男の子で、平和に暮らしたいっていう、夢」
わたしをブスでも美人でもないフツーの女と評したことに文句をつけるべきか。あんたが好きで結婚したんでしょうよ。いささか不満ではあったが、奥から聞こえてくる娘と息子のはしゃぐ声に目を細めるシカマルを見るとその気持ちは不思議と薄れていった。
「あとはあいつが結婚して、あいつが一人前になったら忍を引退する」
「もうそんなこと決めてるの?」
「おう。そんで、おまえより先に老衰で死ぬ」
「縁起でもないこと言わないで」
下忍になったころからこうしようって思ってたんだよ。そう言うシカマルはやっぱり爺臭い。わたしが下忍になりたてのころは、もっと夢見がちなこどもだった。
「ああでも、まったく計画通りってわけにもいかなかったな」
空を仰いでシカマルは言った。きょうは空が澄み渡りとてもきれいだ。わたしも、彼も、そしてわたしと彼のこどもたちも、きっとシカマルの望んだようにこの先も平和に暮らしていけるのだろう、そう思わせてくれる、空だ。
「最高の女と結婚しちまったよ」