レイアップシュートがどうしてもできないから教えてほしい、とみょうじに頼まれたのは三日ほど前だった。バスケ部でもない彼女が何故、と聞けば体育で実技のテストがあるという。なるほど。みょうじは運動が苦手だと常々言っていた。
「ボールは下から上げるのだよ」
「う、うん」
正直みょうじはド下手だった。助言をしてやればそのとおりにやろうとするのだが、次にまたなにか言うと先に言ったことはできなくなる。ただ奮闘するみょうじの姿はかわいらしくて微笑ましい。ああなんだか、みょうじがバスケットボールを持っているとやたらと大きく見えるな。そんなことを考えていたら小さな悲鳴が聞こえた。
「きゃっ」
「みょうじ!」
みょうじはどうやら足を滑らせそのまま尻餅をついてしまったらしい。ボールを抱えたまま座り込んで口をぱくぱくさせる彼女に駆け寄った。
「大丈夫か?」
「うん、だいじょうぶ…はは」
「まったく…立てるか?」
何の気なしに差し出した左手をみょうじが遠慮がちに取ったとき、俺と彼女の両の目がばちんとぶつかった。あ。
「あ、ありがとう、緑間くん…」
「いや、」
目を逸らした。頬が、熱い。