寒いねえ、と真波はへらへら笑っていた。寒い寒いと言うわりには、真波は手袋もマフラーもしていない。それどころか真波の履く制服のズボンは夏用だ。
「寒いなら、まずその格好をなんとかしなさいよ」
「うん、明日からそうするよ」
嘘だ。真波はきっと明日も変わらず薄着だろう。下手をすれば真波は一年中夏用のスラックスを履いているにちがいない。
「見てる方が寒いんだからね」
「あはは」
真波が笑うと白い息がもくもく上がっては消えた。
「でもさあ」
そう言いながら真波が手を絡ませてきた。うわ。つめた。私の怪訝そうな顔を見て真波はまた笑った。
「俺、手袋、嫌いなんだよね」
知るか