「巻島、今さっき変な音しなかった?」
「いや、何も聞こえなかったッショ」
「え〜?ほんと〜?やだなあ怖いなあ」
みょうじはそんなことを言っているが怖がっている様子は微塵も感じられなかった。わざとらしく俺に寄り添い腕を絡ませ、怖いなあと仰々しく歩く。なんのつもりだ。
「……みょうじ」
本当は肝試しなんてこれっぽっちも怖くないんだろ。その言葉は腕に押しつけられる柔らかな感触を前にしては出てこなかった。男の性だ。仕方あるまい。それにキャーキャー喚かれるよりかはよっぽどいい。
「何よ、巻島」
「なんでもない」
「……はいはいごめんなさいね、キャーッとかかわいいこと言えなくて」
俺の言いたかったことを察したのかみょうじは投げやりにそう言って少し頬を膨らませた。かわいい奴。
「俺はそういう子の方が好きッショ」
「はあぁ?」
「だから、お前のそういうとこが好きなんだよ」
「まっ、巻島のばか……すき……」
顔を赤くしてすっかり大人しくなったみょうじに笑いが止まらない。