ばしん。突然の乾いた音と衝撃に思わずうわっと素っ頓狂な声を上げてしまった。私はなんにもひていないのに。こんなことするのは奴しかいない。
「荒北!」
振り返ると荒北が英語のノートと教科書を肩に担いでにやにや笑っていた。やっぱり。恐らくそのノートと教科書で頭をはたかれたのだろう。荒北はしょっちゅうこんなことをしてくる。ていうか横脇に抱えられた辞書で叩かれなくてよかった。問題はそこじゃないけど。
「なにすんのよ」
「別に何もォ?」
キーッ、ムカつく。いつもいつも私にちょっかいかけてきやがって何が楽しいんだちくしょう。
「バーァカ」
荒北はそう吐き捨てるとずんずん教室から出て行った。その後ろ姿をキッと睨んで覚えてろよと心の中で地団駄を踏む。
「愛されてるねえ」
「新開!変なこと言ってないでなんか言ってやってよ同じ部活でしょ」
「そんな野暮なことしないよ」
「はあ?」
「靖友はちょっと子供っぽいところがあるから。小学生みたいだよな」
「何言ってんの」
「みょうじも罪な奴だな。靖友が苦労するわけだよ、鈍ちんさん」

▼好きな子をいじめちゃう荒北