「聞いたわよ、あなた可哀想ね。四六時中監視されて溜まってんじゃないの?いろいろとね」
技官のなまえ・みょうじ中尉がニヒルな笑みを浮かべて私に近寄ってきた。その瞳にはイノベイターとして覚醒した俺への好奇心が多分に含まれており、私としては嫌な予感しかない。長らく、そしてこれからも続く監禁生活でストレス及びその他諸々が溜まりに溜まっているのは事実であるが。
「いくらイノベイターだって言っても、多少の自由は与えられるべきね。あなたも男なんだし?」
彼女が所謂あっち方面のことに言及しているのは明確だった。瞳に宿った好奇心はイノベイターに対する知的なものではなく色欲的なものだったというわけだ。タイトスカートから覗く艶めかしい太股をわざとらしく見せつけてきたりして、何のつもりなのか。自分としても日頃の鬱憤と性欲を吐き出せる機会であるならば歓迎するが、生憎だがそんな場が用意できるはずもないのだ。私がモルモットである故に。
「どういうつもりですかね。監視カメラの下で乱れるのがご趣味と見たが」
「生憎だけどそんな趣味はないわね。誘ってるのは合ってるけど」
「まあ、貴女くらいの女性が相手なら断る理由もありませんがね。ただ私は囚われの身ですので。自由にそんな事するわけにはいかないんですよ」
「あら、大丈夫よ。大丈夫だからここに来たの」
「それはそれは。ご苦労なことで」
「一目見たときからあなたに抱かれたいと思ってたのよ。だからそれくらいの苦労は惜しまないわ」
「……一目惚れですか?」
「そう思ってもらって構わないわ」
「そうですか。ならば、」
本当に断る理由がない。彼女の肩に体重をかけベッドに組み敷いた。みょうじ中尉があまりに満足そうに笑うので苦笑が漏れた。監禁生活が始まって以来、こんな機会が来るなんて思いもよらなかった。自分の容姿は並以上だとの自負はあったが、よもやこんな上物を虜にしていたとは。そう思うと苦笑は別のもっと生々しいものに変わる。
「先に断っておきますがみょうじ中尉、知っての通りモルモット生活のお陰で長らくご無沙汰しておりましてね。優しくするつもりはありませんので」
「ええ結構。それにね、私、あなたになら滅茶苦茶にされてもいいって思ってるくらいよ」
「……貴女は随分とその気にするのがお上手なようだ」
「いいから早く始めてもらえないかしら?」
「では、遠慮なく」