冷え込み厳しくなった街はクリスマスムード一色だ。ツリーにリースにカラフルな電飾の数々が街を彩っている。私も勿論来たるクリスマスに心躍らせているけれど、目下の悩みはエーカー中尉へのプレゼントだ。これだと思うものはつい数ヶ月前に誕生日プレゼントとしてあげてしまった。下手なものもあげられないし、私がこうして中尉へのプレゼントを選びに来るのはもう五回目にはなるだろうか。男の人への贈り物というのはどうしてこうも頭を悩ませるのか。少しお高めの紳士服の店で、私はかれこれ数十分考え込んでいた。
「やっぱりネクタイとか…でも軍では規定のだしなあ」
中尉は仕事が忙しいので、あまりこういうものは身につける機会がないような気がする。かといって時計だとか財布だとかは本当に下手なものは選べないし、中尉のことだから常に身につけるものには並々ならぬこだわりを持っていてもおかしくない。よって却下。
「あーどうしよう」
「誰へのプレゼントかな?なまえ」
「誰ってそりゃ中尉の…って、えっ?」
突然降ってきた声に振り返る前に後ろから抱きすくめられた。
「うわっ」
視界の端にちらと映る癖毛の金髪。間違いなく中尉だ。中尉はここがちょっとした高級店の中であるのもお構いなしにこれでもかとぎゅうぎゅう抱きしめてくる。店員や客が生暖かい目でこちらを見てくるのが心苦しい。
「なっ、なんなんですか中尉…!」
「仕事が早く終わって街に出てみたら、君を見かけたのでな」
「そうじゃなくて…!離してください」
いたずらの成功した子供のように笑った中尉は私の耳朶をかじり、そのついでに頬にキスをして、ようやく離してくれた。くすくすと笑う中尉に思わずため息が漏れる。全く、この人は。
「もう、中尉ったら…。ああでもよかった、中尉、クリスマスプレゼントは何がいいですか?」
「プレゼント?」
中尉は一瞬考え込んだが、すぐににこりと笑みを浮かべた。まるで王子様だと、いつも思う。軍の誰かが彼を空戦の貴公子だとか王子だとか言うけれど、全くもってその通りだ。
「プレゼントなんていらないから、二人で過ごしたい。ああそれと、君の手料理をたんと食べたいな、なまえ」
中尉が手の甲で私の頬をすうっと撫でた。胸の奥がきゅんとなる。
「だ、だめです…私中尉にはいろいろと…」
「あれだ、七面鳥が食べたい」
「は、はあ…」