「あれ、東堂先輩がママチャリ乗ってるなんて珍しいですね」
クラスメイトのママチャリを借りて文化祭の買い出しに行った先で、後輩のみょうじに出くわした。彼女は中学の委員会が同じだった、二つ下の後輩だ。
「借り物だよ、借り物」
いつもロードに乗っている分、この自転車はやたらに重く感じる。それに、ママチャリに乗っているところを見られるくらいなら面倒でも部室からロードを持ってきてそれで来ればよかった。そっちの方が断然格好良い。
「なんか、変な感じですね」
「俺にはロードの方が似合うだろう?ところでだみょうじ、お前も買い出しか?」
彼女の手にはごちゃごちゃと用具の入ったビニール袋が握られているし、おそらくそうだろう。
「あっ、はい。先輩と違って歩きですけどね」
「ほう、そうか。なんなら後ろに乗っていくか、大サービスだぞ」
俺は一番の格好良い笑顔を見せた。こんな絶好の機会でママチャリの利点、生かさないわけにはいかないだろう。前言撤回、ロードで来なくてよかった。みょうじと二人乗り、悪くない。寧ろ願ったり叶ったりだ。
「結構です。間に合ってますんで」
「……まさかフられるとはな」
「東堂先輩の後ろなんて、緊張して乗れたもんじゃないですから」
「……自惚れても?」
「さあ」

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