私、東堂ってあんまり好きじゃないんだよね。友達があんまりにも東堂東堂と騒ぐから、ぽろっと本音を漏らしてしまった。大ブーイングを食らったのは言うまでもないが、私は本当に東堂が好きじゃなかった。まともに話したことなんかないくせに、いつも皆の中心で、うるさいくらいに元気で、なんだか八方美人なところがちょっとばかし苦手だった。悪い人じゃないとは思うんだけど。
「みょうじ」
口に出して以来妙に意識するようになった東堂にある日突然話しかけられた。なんだか気まずい。話しづらい。あんなこと言うんじゃなかった。
「みょうじは俺のことが苦手らしいが」
「はっ?」
いきなりなんだ。ていうか何で知ってる。変な焦燥感が私を襲った。やっぱりあんなこと言うんじゃなかった。
「好かれたい人にはなかなか好かれないとは皮肉なものだ」
「え、は?」
「みょうじ」
ビシィ、とポーズを決めた東堂に普通の女子ならキャーキャー言うのだろうが生憎私は戸惑うばかりでそんな余裕持ち合わせてはいなかった。
「いつまでも苦手とは言わせない。これは宣戦布告だ」
東堂はクールにそう言い放つとどこかへ行ってしまった。取り残された私は訳も分からず立ち尽くすほかなかった。なんだったんだ、アレは。
後日、東堂が私に苦手意識を持たれていることに悩みまくり部活にまで支障が出ていたのを知ったのは廊下で荒北の愚痴を聞いたときであった。

▼東堂